AWS実践2025/8/21
約12分
専門
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AWS SCS-C02 対策 AWS Backupによるランサムウェア対策

AWS Backupを活用したランサムウェア対策の実装方法を解説。バックアップボールトロックによる不変性の確保、RPO/RTO要件を満たすバックアップ戦略、CloudFormationと組み合わせた迅速な復旧手順を実践的な問題を通じて理解します。

この記事のポイント

  • 1
    AWS Backupを使用した包括的なランサムウェア対策の設計方法を理解する
  • 2
    バックアップボールトロックによる不変性の確保とその重要性を把握する
  • 3
    RPO/RTO要件を満たすディザスタリカバリソリューションの実装方法を習得する

目次

ランサムウェアの脅威とAWS Backup

ランサムウェア攻撃は、データを暗号化し、復号と引き換えに身代金を要求するサイバー攻撃です。AWSでは、AWS Backupを中核とした多層防御より、攻撃からの迅速な復旧を実現します。

重要なのは、バックアップ自体が攻撃対象にならないよう保護することです。AWS Backupは、不変性と一元管理より、ランサムウェア対策の要となります。

資格取得で重要なトピック

AWS資格試験では、ランサムウェア対策に関する以下の3つのトピックが頻出します。

AWS Backupによる包括的な保護アーキテクチャ

ランサムウェア対策では、複数のAWSサービスにまたがる一元的なバックアップ管理不可欠です。AWS Backupは、EC2、RDS、S3、DynamoDBなどの主要サービスを統合的に保護します。

AWS Backupによる包括的保護アーキテクチャ

AWS Backupによる包括的保護アーキテクチャ

図のプライマリリージョン内で、保護対象リソースとして複数のEC2/EBSインスタンス、RDSデータベース、S3バケット、DynamoDBテーブルが配置されています。これらすべてのリソースがAWS Backup接続され、自動バックアップが実行されます。

AWS Backup内には保護レイヤーとしてIAMポリシー(第1層)が配置され、アクセス制御を実現します。別途暗号化クラスターではKMS暗号化より、すべてのバックアップデータが暗号化されて保護されます。

セカンダリリージョン(災害復旧)では、クロスリージョンレプリケーションよりバックアップが複製され、地理的冗長性を確保します。さらに不変性保証(Vault Lock)機能により、ランサムウェア攻撃による改ざんからも保護されます。

AWS Organizations(中央管理)から組織全体の一元管理が実現され、ポリシー適用と統合管理により、全リソースに対して一貫したバックアップ戦略を適用します。

判断ポイント:AWS Backupは単一のサービスで複数のAWSリソースを保護し、多層防御地理的冗長性組み合わせた包括的な保護を実現します。

バックアップボールトロックの実装

ランサムウェア攻撃では、バックアップ自体が標的なることがあります。AWS Backup Vault Lockは、WORM(Write Once Read Many)モデル実装し、バックアップの不変性を保証します。

バックアップボールトロックの保護メカニズム

バックアップボールトロックの保護メカニズム

図が示すように、バックアップボールトは3つの保護層で守られています。最も重要なのはVault Lock(コンプライアンスモード)で、これによりルートユーザーを含むすべてのユーザーバックアップを削除・変更できなくなります。

IAMポリシーによる最初の保護層では、通常のアクセス制御を提供します。しかし、管理者権限を持つユーザーや侵害されたアカウントからは保護できません。

リソースベースポリシーによる第二の保護層では、ボールトレベルでのアクセス制御を追加します。特定のプリンシパルのみにアクセスを許可することで、セキュリティを強化します。

Vault Lockよる第三の保護層が、真の不変性を提供します。一度設定されると、保持期間中は誰もバックアップを削除できません。これにより、攻撃者が管理者権限を取得しても、バックアップは保護されます。

判断ポイント:Vault Lockのコンプライアンスモードは、設定した保持期間中、誰も変更できない完全な保護を提供します。

RPO/RTO要件を満たす復旧戦略

ビジネス継続性を確保するには、RPO(目標復旧時点)とRTO(目標復旧時間)要件を満たす必要があります。AWS BackupとCloudFormationを組み合わせることで、迅速な復旧を実現します。

RPO/RTOを考慮した復旧戦略

RPO/RTOを考慮した復旧戦略

図は、復旧オーケストレーションを中心に、データ復元(AWS Backup)】とインフラ再構築(CloudFormation)】が並列に進む構成を示しています。

データ復元では、プライマリ/セカンダリのバックアップボールトからデータ取得し、Vault Lock不変性保証)KMS(暗号化)より保護されたバックアップを用いて、EC2/EBS・RDS・DynamoDB・S3へ復元します。

インフラ再構築では、AWS CodeCommit に保存されたテンプレートを CloudFormation取得し、Auto Scaling グループやネットワークなどのリソースを自動構築します。

管理者は復旧開始(データ復元)と環境構築(インフラ再構築)を同時にトリガーできます。これにより、復旧工程の所要時間を短縮します。

判断ポイント:並列実行によりRTO短縮図り、DR時はセカンダリボールトを優先利用することで事業継続性を高めます。また、Vault Lock + KMS改ざん耐性と機密性を確保し、テンプレート管理をCodeCommitに集約することで再現性の高い復旧を実現します。

実践問題で確認

ここまで学んだAWS Backupによるランサムウェア対策を、実際の試験で出題される問題形式で確認しましょう。各問題は異なる業界・シナリオでの対策実装を扱っています。

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

ある金融サービス企業は、Amazon S3バケットに保存されている顧客の金融データと、EC2インスタンス上で実行されるトランザクション処理アプリケーションに対して、ランサムウェア攻撃のリスクに対応するための災害復旧戦略を強化しようとしています。現在の環境は以下の通りです: - 複数のEC2インスタンスがApplication Load Balancerの背後で実行されている - 各EC2インスタンスにはAmazon EBSボリュームがアタッチされている - 顧客のトランザクションデータと書類はS3バケットに保存されている - データベースにはAmazon RDSが使用されている 同社はすでに予防的および検出的コントロールを実装していますが、これらのコントロールをすり抜けるランサムウェア攻撃が発生した場合に備えて、ビジネス継続性を確保するための追加措置が必要です。セキュリティエンジニアは、RPO(Recovery Point Objective)1時間、RTO(Recovery Time Objective)4時間以内に通常業務に復旧できるディザスタリカバリソリューションを開発する必要があります。 これらの要件を満たすソリューションはどれですか?(2つ選択してください)

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

あるeコマース企業は最近、ランサムウェア攻撃を経験しました。この攻撃では、複数のEC2インスタンスとデータベースが影響を受け、一部のデータが暗号化されました。幸いなことに、このセキュリティインシデントはバックアップからの復旧によって解決することができましたが、プロセス全体に60時間以上かかり、ビジネスへの影響は大きなものでした。 この経験を踏まえて、CISOは将来的な攻撃に対する準備と迅速な復旧を可能にするディザスタリカバリ(DR)計画の強化を要求しています。新しいDR計画では、以下の要件を満たす必要があります: - RPO(目標復旧時点)を1時間以内にする - RTO(目標復旧時間)を4時間以内にする - 複数のAWSサービスにまたがるバックアップを一元管理する - 保存されたバックアップの整合性を確保する - インフラストラクチャのプロビジョニングを自動化する この企業のインフラストラクチャには以下のコンポーネントが含まれています: - フロントエンド用のALB背後のEC2インスタンス(EBSボリューム使用) - バックエンド用のAmazon RDSインスタンス - 製品画像とユーザーデータを保存するS3バケット - 注文履歴を保存するDynamoDBテーブル セキュリティエンジニアは、これらの要件を満たすディザスタリカバリソリューションをどのように実装すべきですか?

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

公共部門の組織がAWSで運用している重要なアプリケーションがランサムウェア攻撃を受けました。この攻撃により、複数のデータベースとEC2インスタンスが暗号化され、アクセスできなくなりました。セキュリティチームはインシデント対応計画に従って、環境を復旧し、将来同様のインシデントに対する耐性を強化する必要があります。 この復旧プロセスに最も効果的な手順の組み合わせはどれですか?(2つ選択)

まとめ

AWS Backupを活用したランサムウェア対策では、一元管理、不変性、自動化3つの要素が重要です。

AWS Backupは、EC2、RDS、S3、DynamoDBなど複数サービスのバックアップを一元管理します。暗号化とアクセス制御よりバックアップ自体を保護し、クロスリージョンレプリケーション地理的冗長性を確保します。

Vault Lockのコンプライアンスモードは、ルートユーザーを含むすべてのユーザーによる削除を防ぐWORMモデル実装します。これにより、攻撃者が管理者権限を取得してもバックアップは保護されます。保持期間中の完全な不変性より、ランサムウェア対策の最後の砦となります。

AWS Backup(データ復元)CloudFormation(インフラ再構築)並列実行することで復旧時間を短縮します。テンプレートをCodeCommit管理し、Infrastructure as Codeより再現性の高い自動復旧を実現、人的エラーも抑制します。

これらの対策を適切に実装することで、ランサムウェア攻撃からの迅速な復旧とビジネス継続性の確保を実現できます。

理解度チェック

AWS Backupによる複数サービスの一元管理の利点を説明できるか?

Vault Lockのコンプライアンスモードの特徴を理解しているか?

RPO 1時間、RTO 4時間を達成する方法を説明できるか?

CloudFormationによる自動復旧の仕組みを理解しているか?

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