AWS ANS-C01 対策 BGP・AS_PATH・BFDによるDirect Connect最適化アーキテクチャ
BGP動的ルーティング、AS_PATHプリペンドによる経路制御、BFDによる高速障害検知を活用したDirect Connect最適化手法を解説。製造・金融業界でのアクティブ/パッシブ構成と高可用性設計を実践問題で理解します。
この記事のポイント
- 1BGP動的ルーティングによるVPN・Direct Connect接続のスケーラビリティ向上を理解する
- 2AS_PATHプリペンドを活用したトラフィック制御とアクティブ/パッシブ構成を習得する
- 3BFDによる高速障害検知とフェイルオーバー時間短縮の実装方法を把握する
目次
Direct Connect最適化の3つの要素
AWS Direct Connectの最適化には、BGP動的ルーティング、AS_PATHプリペンド、BFD(Bidirectional Forwarding Detection) という3つの重要な技術要素があります。
これらの技術は単独でも効果を発揮しますが、組み合わせることでスケーラブルで高可用性を持つハイブリッドクラウドアーキテクチャを構築できます。

BGP・AS_PATH・BFDによるDirect Connect最適化アーキテクチャ
BGP動的ルーティングによるスケーラビリティ
BGP(Border Gateway Protocol) は、静的ルートの手動管理を避け、ネットワークの成長に応じて自動的にルートを学習・交換する動的ルーティングプロトコルです。
VPN接続では、ECMP(Equal Cost Multi-Path) と組み合わせることで複数のトンネルに負荷分散し、集約帯域幅を向上させることができます。
複数VPN接続のECMP構成
医療・製造業界では、帯域不足による業務影響を避けるため、複数のVPN接続を束ねて帯域を拡張する手法が重要です。BGPダイナミックルーティングが必須となります。
- •各VPNトンネルは最大1.25 Gbpsをサポート
- •複数VPN間でのトラフィック自動負荷分散
- •ネットワーク変更時の自動ルート更新
- •単一VPN障害時の透明なフェイルオーバー
静的ルーティング vs BGP動的ルーティング: 静的ルーティングは設定が簡単ですが、ネットワーク成長に伴い管理が複雑化し、人的ミスのリスクが高まります。BGPは初期設定は複雑ですが、自動ルート学習と動的フェイルオーバーにより長期的な運用負荷を大幅に削減できます。
AS_PATHプリペンドによる経路制御
AS_PATH(Autonomous System Path)プリペンドは、BGPルートアドバタイズメントにAS番号を追加することで、経路の優先度を制御する技術です。
複数のDirect Connect接続がある場合、AWSからオンプレミスへのアウトバウンドトラフィックの経路を制御し、アクティブ/パッシブ構成を実現できます。
アクティブ/パッシブ構成の実装
製造業の拠点間接続では、通常時は高帯域の第一拠点(10Gbps)を使用し、障害時のみ第二拠点(5Gbps)にフェイルオーバーする設計が一般的です。
- •172.18.0.0/16ネットワークをプリペンドなしでアドバタイズ
- •同じネットワークにAS番号を追加してパスを長く見せる
- •アウトバウンド・インバウンド両方向での一貫した制御
- •BGPコンバージェンス時間の測定と最適化
AS_PATHは、BGPルートが通過したAS(Autonomous System)の履歴を記録するパス属性です。BGPは最短AS_PATHを持つルートを優先するため、プリペンド(AS番号の追加)によりパスを意図的に長く見せることで、そのルートの優先度を下げることができます。これにより、通常時は短いパスのプライマリルートが選択され、プライマリ障害時のみ長いパスのバックアップルートが使用されるアクティブ/パッシブ構成が実現できます。
ローカルプリファレンス vs リージョナルBGPコミュニティタグ: ローカルプリファレンスは同一AS内でのルート選択優先度を直接制御する基本的な手法で、値が大きいほど優先されます。一方、リージョナルBGPコミュニティタグは特定のAWSリージョンに対する地理的最適化を行う高度な制御手法です。単純なアクティブ/パッシブ構成ではローカルプリファレンスが適していますが、複数リージョン展開やレイテンシー最適化が必要な場合はリージョナルBGPコミュニティタグを選択することで、より精密なトラフィック制御が可能になります。
BFDによる高速障害検知
BFD(Bidirectional Forwarding Detection) は、ネットワークパス上の障害を迅速に検出するプロトコルです。
従来のBGPタイマー(数十秒)に比べ、ミリ秒レベルでの障害検知を実現し、金融システム等の厳格な可用性要件を満たします。
ミリ秒レベル障害検知の実現
金融サービスでは、Direct Connect障害時のフェイルオーバー時間を1分から数秒に短縮することで、業務継続性を大幅に向上できます。
- •ミリ秒レベルの高速障害検知間隔を設定
- •BFD障害検知時の即座のBGPセッション切断
- •誤検知を避けながら高速フェイルオーバーを実現
- •1分から数秒への大幅な短縮効果を検証
BFD(Bidirectional Forwarding Detection)は、ネットワークパス上の障害を双方向で検知するプロトコルです。重要なのは実装場所で、AWS側だけでなくオンプレミス側のルーターに実装することで最大の効果を発揮します。BFDは専用の軽量パケットを定期的に送受信し、応答がない場合に即座に障害を検知します。BGPセッションと連携させることで、BFD障害検知時に即座にBGPセッションを切断し、代替ルートへの高速フェイルオーバーを実現します。従来のBGPホールドダウンタイマー(通常180秒)では1分程度かかる障害検知を、BFDではミリ秒レベルに短縮できます。
BGPホールドダウンタイマー vs BFD: BGPタイマーの短縮も有効ですが、安定性の観点から数十秒以下は推奨されません。BFDは専用の障害検知プロトコルとして設計されており、BGPと連携することで安定性を保ちながら高速フェイルオーバーを実現できます。
実践問題で確認
ここまで学んだBGP・AS_PATH・BFDの3つの技術要素を、実践的な問題で確認しましょう。各問題は実際の企業環境で発生するネットワーク要件に基づいており、適切な技術選択能力を養います。
AWS認定高度なネットワーキング - 専門知識
練習問題
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練習問題
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練習問題
まとめ
BGP・AS_PATH・BFDの3つの技術要素は、それぞれ異なる課題を解決する専用プロトコルとして設計されています。BGPは動的ルーティング、AS_PATHは経路制御、BFDは高速障害検知 という明確な役割分担により、Direct Connectの最適化を実現します。
複数VPN接続の
プリペンド技術で
従来の
これらの技術の適切な組み合わせにより、スケーラブルで高可用性を持つハイブリッドクラウドアーキテクチャを構築できます。業界特有の要件(医療の患者データ保護、製造の生産システム連続性、金融の厳格な可用性)に対応した技術選択が重要なポイントとなります。
理解度チェック
BGP動的ルーティングと静的ルーティングの適用場面の違いを説明できるか?
AS_PATHプリペンドによる経路制御の仕組みとアクティブ/パッシブ構成への応用を理解しているか?
BFDを利用した高速フェイルオーバーの実現方法を説明できるか?