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AWSベストプラクティス
約21分
上級+
8/10
2025年9月6日

AWS ANS-C01 対策 BGP・AS_PATH・BFDによるDirect Connect最適化アーキテクチャ

BGP動的ルーティング、AS_PATHプリペンドによる経路制御、BFDによる高速障害検知を活用したDirect Connect最適化手法を解説。製造・金融業界でのアクティブ/パッシブ構成と高可用性設計を実践問題で理解します。

この記事のポイント

  • 1
    BGP動的ルーティングによるVPN・Direct Connect接続のスケーラビリティ向上を理解する
  • 2
    AS_PATHプリペンドを活用したトラフィック制御とアクティブ/パッシブ構成を習得する
  • 3
    BFDによる高速障害検知とフェイルオーバー時間短縮の実装方法を把握する

目次

Direct Connect最適化の3つの要素

AWS Direct Connectの最適化には、BGP動的ルーティングAS_PATHプリペンドBFD(Bidirectional Forwarding Detection) という3つの重要な技術要素があります。

これらの技術は単独でも効果を発揮しますが、組み合わせることでスケーラブル高可用性を持つハイブリッドクラウドアーキテクチャを構築できます。

BGP・AS_PATH・BFDによるDirect Connect最適化アーキテクチャ

BGP・AS_PATH・BFDによるDirect Connect最適化アーキテクチャ

BGP動的ルーティングによるスケーラビリティ

BGP(Border Gateway Protocol) は、静的ルートの手動管理を避け、ネットワークの成長に応じて自動的にルートを学習・交換する動的ルーティングプロトコルです。

VPN接続では、ECMP(Equal Cost Multi-Path) と組み合わせることで複数のトンネルに負荷分散し、集約帯域幅を向上させることができます。

複数VPN接続のECMP構成

医療・製造業界では、帯域不足による業務影響を避けるため、複数のVPN接続を束ねて帯域を拡張する手法が重要です。BGPダイナミックルーティングが必須となります。

1
複数VPN接続の確立
Transit Gatewayに対して複数のダイナミックBGPベースのSite-to-Site VPN接続を作成
  • 各VPNトンネルは最大1.25 Gbpsをサポート
2
ECMP有効化
等コストマルチパスルーティング(ECMP)を有効にしてトラフィック分散を実現
  • 複数VPN間でのトラフィック自動負荷分散
3
BGPルート学習
ダイナミックBGPによりルート変更やフェイルオーバーを動的処理
  • ネットワーク変更時の自動ルート更新
4
高可用性の確保
BGPプロトコルによる自動フェイルオーバーでサービス継続性を保証
  • 単一VPN障害時の透明なフェイルオーバー
判断基準

静的ルーティング vs BGP動的ルーティング: 静的ルーティングは設定が簡単ですが、ネットワーク成長に伴い管理が複雑化し、人的ミスのリスクが高まります。BGPは初期設定は複雑ですが、自動ルート学習動的フェイルオーバーにより長期的な運用負荷を大幅に削減できます。

AS_PATHプリペンドによる経路制御

AS_PATH(Autonomous System Path)プリペンドは、BGPルートアドバタイズメントにAS番号を追加することで、経路の優先度を制御する技術です。

複数のDirect Connect接続がある場合、AWSからオンプレミスへのアウトバウンドトラフィックの経路を制御し、アクティブ/パッシブ構成を実現できます。

アクティブ/パッシブ構成の実装

製造業の拠点間接続では、通常時は高帯域の第一拠点(10Gbps)を使用し、障害時のみ第二拠点(5Gbps)にフェイルオーバーする設計が一般的です。

1
プライマリ拠点の設定
第一製造拠点(10Gbps)では通常のBGPアドバタイズメントを実行
  • 172.18.0.0/16ネットワークをプリペンドなしでアドバタイズ
2
セカンダリ拠点のプリペンド設定
第二製造拠点(5Gbps)のBGPルートにAS_PATHプリペンドを追加
  • 同じネットワークにAS番号を追加してパスを長く見せる
3
双方向制御の適用
データセンターからAWSへの方向でも同様のBGP構成を適用
  • アウトバウンド・インバウンド両方向での一貫した制御
4
自動フェイルオーバーの確認
プライマリ拠点障害時のセカンダリ拠点への自動切り替えを検証
  • BGPコンバージェンス時間の測定と最適化
🔍AS_PATHの動作原理

AS_PATHは、BGPルートが通過したAS(Autonomous System)の履歴を記録するパス属性です。BGPは最短AS_PATHを持つルートを優先するため、プリペンド(AS番号の追加)によりパスを意図的に長く見せることで、そのルートの優先度を下げることができます。これにより、通常時は短いパスのプライマリルートが選択され、プライマリ障害時のみ長いパスのバックアップルートが使用されるアクティブ/パッシブ構成が実現できます。

🔍BGPコミュニティタグとは

BGPコミュニティタグは、BGPルートに付与される32ビットの属性値で、ルーティングポリシーの制御に使用されます。コミュニティタグを使用することで、ローカルプリファレンス(Local Preference)を動的に制御できます。ローカルプリファレンスは、同一AS内でのルート選択優先度を決める属性で、値が大きいほど優先されます。リージョナルBGPコミュニティタグは、特定のAWSリージョンに対する最適化を行うためのタグで、地理的に近い接続を優先するような制御が可能です。これにより、レイテンシーの最適化と効率的なトラフィック制御を実現できます。

判断基準

ローカルプリファレンス vs リージョナルBGPコミュニティタグ: ローカルプリファレンスは同一AS内でのルート選択優先度を直接制御する基本的な手法で、値が大きいほど優先されます。一方、リージョナルBGPコミュニティタグは特定のAWSリージョンに対する地理的最適化を行う高度な制御手法です。単純なアクティブ/パッシブ構成ではローカルプリファレンスが適していますが、複数リージョン展開レイテンシー最適化が必要な場合はリージョナルBGPコミュニティタグを選択することで、より精密なトラフィック制御が可能になります。

BFDによる高速障害検知

BFD(Bidirectional Forwarding Detection) は、ネットワークパス上の障害を迅速に検出するプロトコルです。

従来のBGPタイマー(数十秒)に比べ、ミリ秒レベルでの障害検知を実現し、金融システム等の厳格な可用性要件を満たします。

ミリ秒レベル障害検知の実現

金融サービスでは、Direct Connect障害時のフェイルオーバー時間を1分から数秒に短縮することで、業務継続性を大幅に向上できます。

1
オンプレミス側のBFD有効化
オンプレミスルーター上のDirect Connect接続でBFDを実装
  • ミリ秒レベルの高速障害検知間隔を設定
2
BGPとの連携設定
BFDセッション状態とBGPルーティングを連動させる
  • BFD障害検知時の即座のBGPセッション切断
3
タイマー調整
BFD検知間隔とBGPコンバージェンス時間の最適化
  • 誤検知を避けながら高速フェイルオーバーを実現
4
冗長構成での効果確認
アクティブ/パッシブ構成でのフェイルオーバー時間測定
  • 1分から数秒への大幅な短縮効果を検証
🔍BFD実装の詳細

BFD(Bidirectional Forwarding Detection)は、ネットワークパス上の障害を双方向で検知するプロトコルです。重要なのは実装場所で、AWS側だけでなくオンプレミス側のルーターに実装することで最大の効果を発揮します。BFDは専用の軽量パケットを定期的に送受信し、応答がない場合に即座に障害を検知します。BGPセッションと連携させることで、BFD障害検知時に即座にBGPセッションを切断し、代替ルートへの高速フェイルオーバーを実現します。従来のBGPホールドダウンタイマー(通常180秒)では1分程度かかる障害検知を、BFDではミリ秒レベルに短縮できます。

ベストプラクティス

BGPホールドダウンタイマー vs BFD: BGPタイマーの短縮も有効ですが、安定性の観点から数十秒以下は推奨されません。BFDは専用の障害検知プロトコルとして設計されており、BGPと連携することで安定性を保ちながら高速フェイルオーバーを実現できます。

実践問題で確認

ここまで学んだBGP・AS_PATH・BFDの3つの技術要素を、実践的な問題で確認しましょう。各問題は実際の企業環境で発生するネットワーク要件に基づいており、適切な技術選択能力を養います。

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練習問題

ある医療サービス企業は、オンプレミスのデータセンターからAWS上のアプリケーションへの通信量が急増し、現在の単一のAWS Site-to-Site VPN接続がボトルネックとなっています。この接続は、オンプレミスのファイアウォールとAWS Transit Gatewayの間に確立されています。VPN接続のスループットを向上させつつ、高可用性も確保したいと考えています。患者データを含むため、信頼性とセキュリティが最も重要な要件です。どのソリューションが最もこれらの要件を満たしますか?

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練習問題

製造業の企業が、生産管理システムをクラウドに移行するハイブリッド計画を進めています。この企業は2つの製造拠点を持ち、それぞれの拠点は複数のネットワークプロバイダーによる冗長リンクで接続されています。拠点間では172.18.0.0/16のCIDRブロック内でIPアドレスを使用し、プライベートASNとIGPを使用したiBGPを実行しています。 企業はまず、東京リージョンの単一VPCでAWSの利用を開始する予定です。最初の製造拠点からDirect Connect接続(10Gbps)がDirect Connectゲートウェイに設定され、プライベート仮想インターフェイス(VIF)を使用しています。この接続では、172.18.0.0/16ネットワーク全体のサマリールートがアドバタイズされています。もう一方の製造拠点からも5Gbpsの別のDirect Connect接続を確立する計画があります。 トラフィックルーティングの設計要件として、AWSとの間のトラフィックは通常時には10Gbpsの第一製造拠点のDirect Connect接続を経由し、障害発生時にのみ5Gbpsの第二製造拠点接続にフェイルオーバーすることが求められています。 この要件を満たすソリューションはどれですか?

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練習問題

金融サービス企業が主要なバックオフィスシステムをオンプレミスからAWSに移行しています。現在、この企業はデータセンターとAWS環境を接続するために、2つの冗長化された10Gbps AWS Direct Connect接続をアクティブ/パッシブ構成で使用しています。最近の障害発生時、プライマリDirect Connect接続に障害が発生してから、セカンダリ接続にトラフィックがフェイルオーバーするまでに約1分かかりました。この企業は、このフェイルオーバー時間を数秒に短縮したいと考えています。 BGPフェイルオーバー時間を最も効果的に短縮する方法はどれですか?

まとめ

BGP・AS_PATH・BFDの3つの技術要素は、それぞれ異なる課題を解決する専用プロトコルとして設計されています。BGPは動的ルーティングAS_PATHは経路制御BFDは高速障害検知 という明確な役割分担により、Direct Connectの最適化を実現します。

複数VPN接続のECMP構成より集約帯域幅を向上させ、動的ルート学習ネットワーク成長に対応。静的ルーティングの管理複雑化を避け、医療・製造業界での信頼性とセキュリティ確保します。

プリペンド技術AWSからオンプレミスへのアウトバウンドトラフィックを制御。製造拠点のアクティブ/パッシブ構成通常時は高帯域接続を優先し、障害時の自動フェイルオーバー実現します。

従来のBGPタイマー(数十秒)をミリ秒レベル短縮し、金融システムの厳格な可用性要件を満足。オンプレミスルーターでの実装により、Direct Connectフェイルオーバー時間を1分から数秒に大幅短縮します。

これらの技術の適切な組み合わせにより、スケーラブル高可用性を持つハイブリッドクラウドアーキテクチャを構築できます。業界特有の要件(医療の患者データ保護、製造の生産システム連続性、金融の厳格な可用性)に対応した技術選択が重要なポイントとなります。

理解度チェック

BGP動的ルーティングと静的ルーティングの適用場面の違いを説明できるか?

AS_PATHプリペンドによる経路制御の仕組みとアクティブ/パッシブ構成への応用を理解しているか?

BFDを利用した高速フェイルオーバーの実現方法を説明できるか?

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