AWS実践2025/8/18
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専門
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AWSSCSC02AWS実践Forensics

AWS SCS-C02 対策 フォレンジック調査

AWSにおけるフォレンジック調査の実装方法を解説。侵害されたEC2インスタンスからの証拠保全手順、揮発性データの取得順序、重要な判断ポイントを実践的な問題を通じて理解します。

この記事のポイント

  • 1
    フォレンジック調査の基本原則と証拠保全の優先順位を理解する
  • 2
    EC2インスタンスからの適切な証拠収集手順を把握する
  • 3
    インシデント対応における重要な判断ポイントを習得する

目次

フォレンジック調査とは

フォレンジック調査は、セキュリティインシデント発生時に証拠を収集・保全し、原因を特定するための体系的な手法です。AWSでは、揮発性の高いデータから順に保全することが重要です。

証拠保全の優先順位:メモリ(最も揮発性)→ネットワーク状態→ディスク(永続的)順で実施します。

資格取得で重要なトピック

AWSにおけるフォレンジック調査の実装では、以下の3つのトピックが特に重要です。

EC2インスタンスからの証拠収集順序

侵害されたEC2インスタンスから証拠を収集する際は、揮発性の高さに基づいた適切な順序が不可欠です。この順序を正確に判断する能力が求められます。

EC2インスタンスの証拠収集順序

EC2インスタンスの証拠収集順序

図の最上部にあるメモリスナップショットは、インスタンス稼働中のみ取得可能最も揮発性の高いデータです。実行中のプロセス、ネットワーク接続、暗号化キーなどの重要な証拠が含まれます。

次にネットワーク状態の記録を行います。セキュリティグループの設定、ネットワークACL、VPCフローログなど、攻撃経路を特定するために必要な情報を収集します。

最後にEBSボリュームのスナップショット取得します。これは永続的なデータであり、インスタンス停止後も保存されるため、最後に実行しても問題ありません。

判断ポイント:メモリスナップショットはインスタンス稼働中のみ取得可能。停止するとメモリ内容は失われるため、必ず最初に実行します。

侵害インスタンスの隔離手順

インシデント対応では、証拠保全とサービス継続性のバランスが重要です。Auto Scaling環境では特に慎重な手順が必要です。

Auto Scaling環境での隔離手順

Auto Scaling環境での隔離手順

図の流れに従って、まず侵害インスタンスの特定を行います。CloudWatch Logs、VPCフローログ、GuardDutyアラートなどから異常な動作を示すインスタンスを特定します。

次にAuto Scalingグループからのデタッチ実行します。これにより、ヘルスチェック失敗による自動終了を防止し、新しいインスタンスが自動的に起動されてサービス継続性を維持します。

続いてALBターゲットグループからの登録解除より、新規トラフィックの流入を防ぎます。既存の接続は維持されるため、実行中の処理への影響を最小限に抑えられます。

最後に隔離用セキュリティグループの適用で、必要最小限の通信のみを許可します。フォレンジック調査に必要なアクセスは維持しつつ、マルウェアの拡散を防止します。

判断ポイント:Auto Scalingグループからのデタッチで自動終了を防止し、ALBからの登録解除で新規トラフィックを遮断します。

証拠の長期保存と完全性確保

フォレンジックデータは法的証拠として使用される可能性があるため、改ざん防止と長期保存必須です。AWSでは複数のサービスを組み合わせて実現します。

フォレンジックデータの保存アーキテクチャ

フォレンジックデータの保存アーキテクチャ

図の中央にあるS3 Object Lock(コンプライアンスモード)証拠保全の中核です。このモードでは、ルートユーザーを含むすべてのユーザーが、保持期間中のオブジェクトを削除・上書きできません。

バージョニングにより、すべての変更履歴が自動的に記録されます。誤って書きした場合でも、以前のバージョンから復元可能です。

S3 Glacier Deep Archiveへの自動移行により、長期保存のコストを最適化します。アクセス頻度の低いデータを低コストで保存しつつ、必要時には取り出し可能です。

CloudTrail統合により、すべてのアクセスログが記録されます。誰が、いつ、どのデータにアクセスしたかの監査証跡が残り、Chain of Custody(証拠保管の連鎖)維持できます。

判断ポイント:S3 Object Lockのコンプライアンスモードは、設定した保持期間中は誰も削除できない不変性を提供します。

実践問題で確認

ここまで学んだフォレンジック調査の実装手順を、実践的な問題で確認しましょう。各問題は実際のインシデント対応シナリオに基づいており、適切な判断力を養います。

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

ある医療機関では、患者記録管理システムがAmazon EC2インスタンス上で実行されています。これらのインスタンスはApplication Load Balancer(ALB)の背後にあり、Amazon EC2 Auto Scalingグループで管理されています。また、各インスタンスにはAmazon Elastic Block Store(Amazon EBS)ボリュームがアタッチされており、患者データを保存しています。 医療機関のセキュリティチームは、アプリケーションに対する不審なアクセスパターンを検出し、1つのEC2インスタンスが侵害された可能性があると判断しました。医療機関のコンプライアンス部門は、規制要件に従って、このインシデントのすべてのフォレンジック証拠を適切に保存するよう指示しています。 セキュリティエンジニアは、フォレンジック証拠を適切に保存するために、どのような順序でステップを実行する必要がありますか?

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

ある製造業企業のセキュリティエンジニアが、自社のAWSアカウントで動作しているウェブアプリケーションに関するセキュリティインシデントを検知しました。このアプリケーションはApplication Load Balancerの背後にある複数のAmazon EC2インスタンスで実行されており、EC2インスタンスはAmazon EC2 Auto Scalingグループ内の複数のサブネットと複数のアベイラビリティーゾーンにわたってデプロイされています。 通常、これらのインスタンスはHTTP、HTTPS、およびSQLプロトコルでのみ通信していますが、調査の結果、1つのEC2インスタンスがポート25を介して大量の不審なSMTPトラフィックを外部に送信していることが判明しました。他のすべてのトラフィックは正常です。 セキュリティエンジニアは、侵害されたEC2インスタンスを隔離し、フォレンジック証拠を保存しつつ、アプリケーションのダウンタイムを最小限に抑える必要があります。 これらの要件を満たすために、セキュリティエンジニアはどのような手順を組み合わせて実行する必要がありますか?(3つ選択してください)

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

ある企業で重大なセキュリティインシデントが発生し、セキュリティチームは現在、侵害されたEC2インスタンスからフォレンジックデータを収集しています。このデータには、メモリダンプ、ディスクイメージ、ログファイル、および各種アーティファクトが含まれています。今後の法的調査や訴訟の可能性を考慮し、フォレンジックデータの完全性と証拠能力を確保するために、これらのアーティファクトを適切に保存する必要があります。 セキュリティチームは、以下の要件を満たすソリューションを実装したいと考えています: - データは変更や削除から保護されている - アクセスは厳密に制御され、監査されている - 長期的な保存のためのコスト効率が良い - データの完全性を証明できる - アクセス権限を持つユーザーでも誤って削除できない これらの要件を最もよく満たし、フォレンジックアーティファクトを効果的に保護、保存するアプローチはどれですか?

まとめ

フォレンジック調査の実装では、揮発性の順序メモリ→ネットワーク→ディスク)に従った証拠収集が最重要です。

EC2インスタンスでは、メモリスナップショットを最初に取得し、その後インスタンスを停止してEBSスナップショットを取得します。メモリデータは最も揮発性が高くインスタンス稼働中のみ取得可能ため、証拠保全の最優先事項となります。実行中のプロセス、ネットワーク接続、暗号化キーなどの重要な証拠が含まれます。

Auto Scaling環境では、デタッチと登録解除のタイミング証拠保全の成功を左右します。インスタンスをAuto Scalingグループからデタッチし、ALBから登録解除することで、新しいトラフィックを遮断しつつ、既存の証拠を保護します。この手順により、自動スケーリングによる意図しないインスタンス終了を防げます。

証拠の長期保存には、S3 Object Lock(コンプライアンスモード)よる不変性の確保が効果的です。このモードでは、ルートユーザーを含むすべてのユーザー保持期間中のオブジェクトを削除・上書きできません。バージョニングとCloudTrail統合により、完全な監査証跡とChain of Custody(証拠保管の連鎖)維持できます。

これらの実装パターンを理解し、適切な手順を選択する能力インシデント対応の成功につながります。

理解度チェック

メモリ→ネットワーク→ディスクの揮発性順序を説明できるか?

メモリスナップショットを最初に取得する理由を説明できるか?

Auto Scaling環境での適切な隔離タイミングを判断できるか?

S3 Object Lockのコンプライアンスモードの特徴を説明できるか?

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