AWS Glue パフォーマンス不足 トラブルシューティング
AWS GlueのDPU拡大、パーティション化、並列処理によるパフォーマンス問題の解決策を解説。メモリ不足エラー、実行時間遅延、スピレージ問題の体系的な最適化手法とトラブルシューティング技術を習得します。
この記事のポイント
- 1AWS Glueのメモリ不足エラーとスピレージ問題に対するDPU拡大とワーカータイプ変更の効果的な実装方法を理解する
- 2S3パーティション化と並列処理による実行時間短縮技術を習得し、大量データ処理の最適化手法を身に付ける
- 3小売業・金融業・データ分析環境での実践問題を通じてGlue性能問題の即座の判断と最適解選択能力を養う
目次
Glueパフォーマンス問題の概要
AWS Glueのパフォーマンス問題は、大規模データ処理で頻繁に発生する課題です。主にジョブ実行時間の長期化、メモリ不足エラー、データスピレージ頻発の3つの症状として現れ、QuickSightダッシュボードの応答遅延や分析業務の停滞を引き起こします。
これらの問題は相互に関連し合いながら発生することが多く、適切な診断と対策が必要です。以下では各問題の特徴と解決策を詳しく解説します。
ジョブ実行時間の長期化
ジョブ実行時間の長期化は、AWS Glueで最も頻繁に発生するパフォーマンス問題です。データ量の増加に伴い、従来は数分で完了していた処理が数時間かかるようになり、ビジネスの意思決定に遅延をもたらします。
原因と症状
実行時間長期化の主な原因は全データスキャンと処理の非効率性です。パーティション化されていないS3データでは、必要なデータが一部でも全てのファイルをスキャンする必要があり、処理時間が線形に増加します。
症状として、CloudWatchメトリクスでジョブ実行時間の継続的な増加、ダッシュボードの応答遅延、バッチ処理の完了時間遅延が観測されます。定期レポートの生成時間が延長し、業務スケジュールに影響を与える場合があります。
解決策
実行時間問題の解決にはS3パーティション化が最も効果的です。年月日でデータを分割することで、AWS Glueが必要なパーティションのみをスキャンし、処理データ量を大幅削減できます。
ワーカータイプの拡大も重要な対策です。StandardからG.1XやG.2Xに変更することで、並列処理能力が向上し、大量データの処理時間を短縮できます。必要な期間のデータのみを処理する設計にすることで大幅な高速化を実現できます。
S3パーティション化は s3://bucket/year=2024/month=09/day=21/
の形式でデータを整理し、AWS Glueが自動的にパーティション情報を活用してクエリプルーニングを実行します。処理データ量を90%以上削減できる場合もあります。
S3パーティション化による年月日分割とワーカータイプをG.1XやG.2Xに拡大することで、処理データ量削減と並列処理能力向上により劇的な高速化を実現できます。
メモリ不足エラー
メモリ不足エラーは、大規模データの結合処理や集計処理で発生する深刻な問題です。Spark executorのメモリ制限を超えると、ジョブが失敗したり、パフォーマンスが著しく低下します。
原因と症状
メモリ不足の根本原因はStandardワーカーのメモリ制限(16GB)とデータスキューです。特定のキーに大量のデータが集中する結合処理や、大規模なGroupBy集計でメモリ使用量が急激に増加します。
症状として、OutOfMemoryError
、Container killed by YARN
、ジョブの異常終了が発生します。大量のデータが特定のキーに集中する処理では、データの偏りによりメモリ不足が頻発する傾向があります。
解決策
メモリ不足問題にはG.2Xワーカータイプへの変更が最も効果的です。32GBメモリと8vCPUを提供し、Standardワーカーの2倍のリソースでメモリ集約的な処理に対応できます。
データチャンク分割も重要な手法です。大規模なデータセットを時間単位や地域単位で分割し、段階的に処理することでメモリ使用量を制御できます。1TB以上のデータ処理では必須のアプローチとなります。
G.2Xワーカータイプは各ワーカーに32GBメモリと8vCPUを提供し、メモリ集約的な結合処理や大規模な集計でSpark executorメモリ不足を解決します。コストは増加しますが、処理の安定性と速度が大幅に向上します。
G.2Xワーカータイプへの変更により32GBメモリと8vCPUを確保し、データチャンク分割処理と組み合わせることでメモリ制限を解除して大規模処理の安定性を向上できます。
スピレージ頻発
スピレージ頻発は、メモリ不足によりデータがディスクに書き込まれる現象で、処理速度の大幅な低下を引き起こします。Spark UIで確認でき、パフォーマンス劣化の重要な指標となります。
原因と症状
スピレージの原因はメモリ容量不足とデータの偏りです。Sparkがメモリ内で処理しきれないデータをディスクに一時保存するため、I/O待機時間が発生し、処理速度が10分の1以下に低下することもあります。
症状として、Spark UIのステージビューで「Spill (Memory)」「Spill (Disk)」の値が大きくなり、タスクの実行時間が不均等になります。複雑な結合処理やCTEを含むクエリでスピレージが頻発する傾向があります。
解決策
スピレージ問題の解決にはG.2Xワーカータイプへの変更が最も直接的で効果的です。より多くのメモリを持つワーカータイプにより、Sparkがより多くのデータをメモリ内で処理でき、ディスクへの書き込みを大幅に削減できます。
処理ロジックの最適化も重要です。結合順序の見直し、不要なカラムの事前除去、適切なパーティション数の設定により、メモリ使用量を効率化できます。
G.2Xワーカータイプによるメモリ拡大と処理ロジック最適化(結合順序見直しと不要カラム除去)により、ディスクI/Oを削減してメモリ内処理による高速化を実現できます。
実践問題で確認
ここまで学んだGlueパフォーマンス最適化手法を、練習問題で確認します。各問題はパーティション化、ワーカータイプ変更、並列処理での典型的なトラブルシューティングシナリオを扱い、適切なパフォーマンス最適化とリソース管理能力を養います。
AWS認定データエンジニア - アソシエイト
練習問題
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練習問題
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練習問題
まとめ
AWS Glueのパフォーマンス問題は、S3パーティション化とG.2Xワーカーによる根本的な解決と、mapPartitions()並列処理による効率化で対処できます。データ量増加、複雑な結合処理、メモリ制約といった様々な課題に応じた最適解選択が重要です。
問題の性質を即座に判断し、実行時間問題にはパーティション化、メモリ不足にはG.2X変更、並列処理不足にはmapPartitions()という技術マッピングを確実に行うことで、効率的な問題解決を実現できます。