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AWSベストプラクティス
約17分
上級+
8/10
2025年8月20日

AWS ANS-C01 対策 ハイブリッドDNS解決アーキテクチャ

Route 53 ResolverによるハイブリッドDNS解決の設計パターンを解説。インバウンド・アウトバウンドエンドポイントの集中管理モデルを理解し、オンプレミスとAWS間の双方向の名前解決を効率的に実現する方法を実践問題で学びます。

この記事のポイント

  • 1
    Route 53 Resolverによる双方向DNS解決の仕組みを理解する
  • 2
    インバウンド・アウトバウンドエンドポイントの役割と使い方を習得する
  • 3
    集中管理型DNSアーキテクチャの利点と実装パターンを把握する

目次

ハイブリッドDNS解決の課題

AWSとオンプレミスのデータセンターを連携させるハイブリッド環境では、双方のネットワークからリソースの名前解決をシームレスに行う必要があります。例えば、AWS上のアプリケーションがオンプレミスのデータベースサーバーに、逆にオンプレミスの利用者がAWS上のWebサーバーに、それぞれのプライベートIPアドレスでアクセスするようなケースです。

この課題に対し、各サーバーにhostsファイルを設定したり、VPCごとにDNSサーバーを立てたりする方法は、管理が煩雑になり、スケーラビリティに欠けるため現実的ではありません。AWSが提供するマネージドサービスであるRoute 53 Resolverがこの問題を解決します。

Route 53 Resolverによる解決策

Route 53 Resolverは、ハイブリッド環境におけるDNSクエリの転送を担う「橋渡し役」です。Resolverは、インバウンドエンドポイントアウトバウンドエンドポイントという2つのコンポーネントを使って、双方向の名前解決を実現します。

インバウンドエンドポイント (オンプレミス → AWS)

インバウンドエンドポイントは、オンプレミスからのDNSクエリを受け付けるための窓口です。VPC内に作成され、プライベートIPアドレスを持ちます。

オンプレミスのDNSサーバーで「AWS上のドメイン(例: *.internal.aws)に関する問い合わせは、インバウンドエンドポイントのIPアドレスに転送する」という条件付き転送ルールを設定します。これにより、オンプレミスのクライアントがAWS上のリソースの名前を解決できるようになります。

アウトバウンドエンドポイント (AWS → オンプレミス)

アウトバウンドエンドポイントは、AWSからオンプレミスへDNSクエリを転送するための出口です。これ単体では機能せず、Resolverルールと組み合わせて使用します。

Resolverルールで「オンプレミスのドメイン(例: *.corp)に関する問い合わせは、オンプレミスのDNSサーバーに転送する」と設定し、そのルールをVPCに関連付けます。これにより、VPC内のEC2インスタンスなどがオンプレミスのサーバー名を解決できるようになります。

ベストプラクティス

インバウンドは「中に入る」なのでオンプレミスからAWSへ、アウトバウンドは「外に出る」なのでAWSからオンプレミスへと覚えると、方向を混同しにくくなります。

エンドポイントの集中管理

多数のVPCが存在する環境で最も重要なのが、エンドポイントの集中管理モデルです。各VPCにエンドポイントを作成するのではなく、「共有サービスVPC」や「ネットワークVPC」のようなハブとなるVPCにインバウンド・アウトバウンドエンドポイントを1セットだけ作成します。

そして、作成したResolverルールをAWS Resource Access Manager (RAM) を使って他のすべてのVPCに共有します。この構成により、管理オーバーヘッドとコストを大幅に削減しつつ、一貫性のあるDNS解決環境をスケーラブルに実現できます。大規模なハイブリッド環境では、この集中管理モデルが推奨されるアーキテクチャパターンです。

Route 53 Resolverエンドポイントの集中管理アーキテクチャ

Route 53 Resolverエンドポイントの集中管理アーキテクチャ

上図に示すように、集中管理モデルでは共有サービスVPCに配置された1セットのエンドポイントが、すべてのスポークVPCのDNS解決を担います。この構成により以下の具体的なメリットが得られます:

コスト最適化

エンドポイント1セットのみで全VPCをカバー。VPC数に関係なく固定コスト。

運用効率化

設定変更は共有VPCのみ。全体への影響を一箇所で制御可能。

スケーラビリティ

新しいVPCはRAM共有を受けるだけで即座にDNS解決機能を利用可能。

一貫性保証

全VPCで同一のDNS解決ルールが適用され、設定の不整合を防止。

🔍AWS Resource Access Manager (RAM) とは

AWS RAMは、AWSリソースを複数のアカウントやOrganization内で安全に共有するためのサービスです。Route 53 Resolverルールの場合、ルールを作成したアカウントから他のアカウントのVPCに対してルールを共有できます。

共有されたVPCでは、自動的にそのルールが適用され、追加の設定なしでDNS転送機能を利用できるようになります。これにより、大規模な環境でも効率的なDNS管理が実現できます。

判断基準

集中管理モデルは、10個以上のVPCがある環境で特に効果を発揮します。少数のVPCの場合は個別設定でも管理可能ですが、将来の拡張性を考慮すると最初から集中管理モデルを採用することを強く推奨します。

実践問題で確認

ここまで学んだハイブリッドDNS解決のパターンを、実践的な問題で確認しましょう。

AWS認定高度なネットワーキング - 専門知識

練習問題

ある企業は、AWS上と2つのオンプレミスデータセンターを持つハイブリッド環境を運用しています。AWS環境には複数のVPCがあり、すべてのVPCはAWS Transit Gatewayで接続されています。オンプレミスのデータセンターはAWS Site-to-Site VPN接続を介してAWS環境に接続されています。企業は以下の要件を持つDNS解決ソリューションを実装する必要があります: - AWS上のリソースからオンプレミスの内部ドメイン(example.internal)のホスト名を解決できること - オンプレミスのリソースからAWS上のリソースのプライベートDNS名を解決できること - 将来追加されるVPCにも最小限の設定で同じDNS解決機能を提供できること - 運用オーバーヘッドを最小限に抑えること これらの要件を満たすために、ネットワークエンジニアが実装すべき最も効率的なソリューションはどれですか?

AWS認定高度なネットワーキング - 専門知識

練習問題

製造業の企業が、オンプレミスデータセンターと複数のAWS VPCを含むハイブリッド環境を運用しています。これらのVPCは、AWS Transit Gatewayを介してオンプレミスデータセンターと接続されています。ネットワーク管理者は、オンプレミスのシステムからAWS上のリソースへのDNS解決と、AWS上のリソースからオンプレミスのシステムへのDNS解決の両方を可能にする必要があります。このハイブリッドDNSアーキテクチャを実現するために、どのような構成を行うべきですか?

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練習問題

ある大手医療機関が複数の病院と診療所を運営しており、患者管理システムをオンプレミスからAWSクラウドに移行する計画を進めています。移行は段階的に行われ、一部のシステムはオンプレミスに残り、一部はAWSに移行されます。 移行計画では、患者データベースと電子カルテシステムを複数のAWSアカウントとVPCに分散して配置します。これらのシステムはプライベートドメイン(example-healthcare.internal)を使用しており、すべてのシステム間でシームレスな双方向DNS解決が必要です。 セキュリティ要件により、すべてのDNSトラフィックは暗号化され、外部からアクセス不可能である必要があります。また、将来的なスケーリングも考慮する必要があります。 ネットワークエンジニアは、最小限の管理オーバーヘッドでこれらの要件を満たすハイブリッドDNSアーキテクチャをどのように設計すべきですか?

まとめ

ハイブリッド環境のDNS解決は、Route 53 Resolverが鍵となります。インバウンドアウトバウンドのエンドポイントの役割を正確に理解し、特に複数VPC環境ではエンドポイントを集中管理するパターンを適用することが、効率的でスケーラブルなアーキテクチャを構築するための最短ルートです。

オンプレミスからAWSへ名前解決を実現します。オンプレミスのDNSサーバーからクエリを転送させるための「受け皿」です。

AWSからオンプレミスへ名前解決を実現します。VPCからのクエリをオンプレミスのDNSサーバーへ転送するための「出口」で、Resolverルールセットで使います。

エンドポイントを共有VPCに集約し、ルールをRAMで共有するのがベストプラクティスです。これにより、コストと管理の手間を大幅に削減できます。

理解度チェック

インバウンドとアウトバウンド、それぞれのクエリの方向を説明できるか?

なぜエンドポイントを各VPCではなく、共有VPCに集約するのか説明できるか?

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