AWS ANS-C01 対策 MTU不一致による接続障害のトラブルシューティング
ジャンボフレーム環境でのMTU不一致による大容量ファイル転送失敗問題の診断と解決を解説。Path MTU Discovery修復、Site-to-Site VPN制限対応、Don't Fragmentフラグ設定による効果的なトラブルシューティング手法を実践問題で習得します。
この記事のポイント
- 1MTU不一致による大容量ファイル転送失敗の症状識別とジャンボフレーム環境での問題分析手法を理解する
- 2Path MTU Discovery機能の修復とICMP許可設定による根本的解決アプローチを習得する
- 3医療・製造業・ファイル共有システムでの実践問題を通じてMTU関連トラブルシューティング能力を身に付ける
目次
MTU不一致による接続障害
MTU(Maximum Transmission Unit)不一致は、ジャンボフレーム(9000バイト)を使用するAWS環境で最も頻繁に発生するネットワーク障害の一つです。小さなパケットは正常に転送されるが、大容量ファイル転送が断続的に失敗するという特徴的な症状を示します。
この問題は、Site-to-Site VPN(MTU 1500バイト制限)やVPCピアリング接続を経由する通信で特に発生しやすく、Don't Fragment(DF)フラグが設定されたパケットが中間経路でドロップされることが主要因となります。
「小さなファイルは転送成功、大きなファイルは転送失敗」「ログイン画面は正常表示、データダウンロードは失敗」というパケットサイズ依存の障害パターンが特徴です。
Don't Fragment(DF)フラグが設定されたパケットは、中間経路でのフラグメンテーションが禁止されるため、MTU制限を超えるとパケットが破棄されます。フラグメンテーションとは、大きなパケットを小さな断片に分割して送信し、受信側で再組み立てする仕組みです。DFフラグが有効な場合、この分割処理が無効化されるため、パケットサイズ依存の障害が発生します。
根本原因分析
MTU不一致の根本原因は、ジャンボフレーム設定(9000バイト)と中間経路のMTU制限の不整合です。Don't Fragmentフラグが設定されたパケットは、途中経路でのフラグメンテーションが禁止されているため、制限を超えるパケットが破棄されます。
ジャンボフレーム(9000バイト) → Site-to-Site VPN(1500バイト制限) → Don't Fragmentフラグ → パケットドロップ → 転送失敗という流れで問題が発生します。
解決アプローチ
MTU不一致問題の解決にはPath MTU Discovery(PMTUD)の修復が最も効果的です。セキュリティグループでICMPトラフィック(特にType 3 Code 4)を許可し、送信側が適切なパケットサイズを自動調整できるようにします。
代替手段として、アプリケーションレベルでのMTU調整(1500バイト以下に制限)やDon't Fragmentフラグの無効化も有効な解決策です。
①ICMPトラフィック許可(PMTUD修復)→ ②アプリケーションMTU調整 → ③DFフラグ無効化の順序で解決します。
ICMP Type 3 Code 4(Fragmentation Needed and Don't Fragment was Set)メッセージを許可することで、Path MTU Discovery機能が正常に動作します。セキュリティグループでICMPトラフィックを許可し、送信側が適切なパケットサイズを自動調整できるようにします。
実践問題で確認
ここまで学んだMTU不一致による接続障害のトラブルシューティング手法を、実践的な問題で確認しましょう。各問題は医療画像処理、産業制御システム、ファイル共有サービスでの典型的なMTU関連障害を扱い、適切な診断と解決能力を養います。
AWS認定高度なネットワーキング - 専門知識
練習問題
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練習問題
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まとめ
MTU不一致による接続障害は、Path MTU Discovery(PMTUD)の修復により根本的に解決できます。ICMPトラフィックの許可による自動調整機能の復旧が最も効果的で、アプリケーションレベルの調整も有効な代替手段となります。
ジャンボフレーム環境での選択的障害パターンの理解と、Don't Fragmentフラグの影響分析により、医療画像処理、産業制御システム、ファイル共有サービスなど、高性能データ転送を要求するシステムの安定運用を実現できます。
これらのトラブルシューティング手法により、従来の複雑な設定変更による対症療法を回避し、PMTUD機能修復による根本解決を実現できます。問題文の「大きなファイル転送失敗」「小さなファイル正常」「Don't Fragmentフラグ」キーワードの識別とICMP許可設定選択が重要な診断判断となります。