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AWSトラブルシューティング
約18分
上級+
8/10
2025年9月9日

AWS ANS-C01 対策 MTU不一致による接続障害のトラブルシューティング

ジャンボフレーム環境でのMTU不一致による大容量ファイル転送失敗問題の診断と解決を解説。Path MTU Discovery修復、Site-to-Site VPN制限対応、Don't Fragmentフラグ設定による効果的なトラブルシューティング手法を実践問題で習得します。

この記事のポイント

  • 1
    MTU不一致による大容量ファイル転送失敗の症状識別とジャンボフレーム環境での問題分析手法を理解する
  • 2
    Path MTU Discovery機能の修復とICMP許可設定による根本的解決アプローチを習得する
  • 3
    医療・製造業・ファイル共有システムでの実践問題を通じてMTU関連トラブルシューティング能力を身に付ける

目次

MTU不一致による接続障害

MTU(Maximum Transmission Unit)不一致は、ジャンボフレーム(9000バイト)を使用するAWS環境で最も頻繁に発生するネットワーク障害の一つです。小さなパケットは正常に転送されるが、大容量ファイル転送が断続的に失敗するという特徴的な症状を示します。

この問題は、Site-to-Site VPN(MTU 1500バイト制限)やVPCピアリング接続を経由する通信で特に発生しやすく、Don't Fragment(DF)フラグが設定されたパケットが中間経路でドロップされることが主要因となります。

障害パターン

「小さなファイルは転送成功、大きなファイルは転送失敗」「ログイン画面は正常表示、データダウンロードは失敗」というパケットサイズ依存の障害パターンが特徴です。

🔍Don't Fragmentフラグ

Don't Fragment(DF)フラグが設定されたパケットは、中間経路でのフラグメンテーションが禁止されるため、MTU制限を超えるとパケットが破棄されます。フラグメンテーションとは、大きなパケットを小さな断片に分割して送信し、受信側で再組み立てする仕組みです。DFフラグが有効な場合、この分割処理が無効化されるため、パケットサイズ依存の障害が発生します。

根本原因分析

MTU不一致の根本原因は、ジャンボフレーム設定(9000バイト)中間経路のMTU制限の不整合です。Don't Fragmentフラグが設定されたパケットは、途中経路でのフラグメンテーションが禁止されているため、制限を超えるパケットが破棄されます。

根本原因

ジャンボフレーム(9000バイト) → Site-to-Site VPN(1500バイト制限) → Don't Fragmentフラグ → パケットドロップ → 転送失敗という流れで問題が発生します。

解決アプローチ

MTU不一致問題の解決にはPath MTU Discovery(PMTUD)の修復が最も効果的です。セキュリティグループでICMPトラフィック(特にType 3 Code 4)を許可し、送信側が適切なパケットサイズを自動調整できるようにします。

代替手段として、アプリケーションレベルでのMTU調整(1500バイト以下に制限)やDon't Fragmentフラグの無効化も有効な解決策です。

1
ICMP許可設定
EC2セキュリティグループでICMP(Type 3 Code 4)を許可し、Path MTU Discovery機能を有効化します。
2
MTU設定確認
各ネットワークパスのMTU制限を確認し、ジャンボフレーム設定との整合性を検証します。
3
アプリケーション調整
必要に応じてアプリケーションのパケットサイズを1500バイト以下に制限、またはDFフラグを無効化します。
4
動作確認テスト
大容量ファイル転送テストを実施し、全てのネットワークパスで正常動作を確認します。
解決策

①ICMPトラフィック許可(PMTUD修復)→ ②アプリケーションMTU調整 → ③DFフラグ無効化の順序で解決します。

🔍ICMPトラフィック許可

ICMP Type 3 Code 4(Fragmentation Needed and Don't Fragment was Set)メッセージを許可することで、Path MTU Discovery機能が正常に動作します。セキュリティグループでICMPトラフィックを許可し、送信側が適切なパケットサイズを自動調整できるようにします。

実践問題で確認

ここまで学んだMTU不一致による接続障害のトラブルシューティング手法を、実践的な問題で確認しましょう。各問題は医療画像処理、産業制御システム、ファイル共有サービスでの典型的なMTU関連障害を扱い、適切な診断と解決能力を養います。

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練習問題

医療データ分析企業が、クラスタープレイスメントグループ内のAmazon EC2インスタンス上で大規模な医療画像処理ソリューションを実装しています。この処理システムのユーザーインターフェースは1KBの小さなHTMLページですが、主な機能は1GB以上の大きな医療画像ファイルをネットワーク経由でクライアントに共有することです。これらのファイル転送はDon't Fragment(DF)フラグが設定されており、EC2インスタンスのElastic Network Interfaceにはジャンボフレームが有効化されています。管理者はUI自体にはVPC内、インターネット経由、オンプレミスからのアクセスで問題がないことを確認していますが、一部のクライアントが医療画像ファイルを受信できない事例が断続的に発生しています。この問題の根本原因として考えられるのはどれですか?

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製造業企業がAWS上に産業制御システムをデプロイしています。このシステムは複数のVPC内で実行され、大容量のテレメトリデータを収集・処理しています。最近、特定のVPC間でのデータ転送が断続的に失敗する問題が発生しました。ネットワークエンジニアは調査の結果、以下の情報を収集しました: - 問題が発生しているVPC間の通信はVPCピアリング接続を使用している - 失敗するデータ転送はすべて8500バイト以上のパケットサイズである - 送信側アプリケーションはDon't Fragmentフラグを設定している - 小さなパケットの転送は正常に完了する - すべてのEC2インスタンスはジャンボフレームをサポートするように設定されている - 失敗するパケットはICMPタイプ3(宛先到達不能)、コード4(フラグメンテーションが必要だがDFフラグが設定されている)エラーを生成している この問題を解決するためにネットワークエンジニアが取るべき最も効果的な対策は何ですか?

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練習問題

ある製造企業が、大規模なIoTデバイスフリートからのデータを処理するために、プレイスメントグループ内のAmazon EC2インスタンスクラスターを運用しています。このシステムは小さなテレメトリデータ(数KB程度)を収集すると同時に、分析用に大きなデータファイル(4GB超)を処理してストレージにアップロードします。エンジニアリングチームはパフォーマンスを最適化するため、EC2インスタンスのネットワークインターフェイスでジャンボフレーム(MTU 9001)を有効化し、大きなファイル転送は「Don't Fragment」フラグを設定しています。最近、一部のデータファイルの転送が断続的に失敗する問題が報告されました。障害パターンを分析したところ、特定のネットワークパスを通るトラフィックでのみ問題が発生していることが判明しました。この状況でネットワーク接続の問題をトラブルシューティングするための最も効果的な方法は何ですか?

まとめ

MTU不一致による接続障害は、Path MTU Discovery(PMTUD)の修復により根本的に解決できます。ICMPトラフィックの許可による自動調整機能の復旧が最も効果的で、アプリケーションレベルの調整も有効な代替手段となります。

ジャンボフレーム環境での選択的障害パターンの理解と、Don't Fragmentフラグの影響分析により、医療画像処理、産業制御システム、ファイル共有サービスなど、高性能データ転送を要求するシステムの安定運用を実現できます。

これらのトラブルシューティング手法により、従来の複雑な設定変更による対症療法を回避し、PMTUD機能修復による根本解決を実現できます。問題文の「大きなファイル転送失敗」「小さなファイル正常」「Don't Fragmentフラグ」キーワードの識別とICMP許可設定選択が重要な診断判断となります。

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