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AWSベストプラクティス
約23分
上級+
8/10
2025年9月8日

AWS ANS-C01 対策 ルート集約による大規模ハイブリッドネットワーク最適化

大規模ハイブリッドネットワークにおけるルート集約の実装方法を解説。BGPによる動的ルーティング制御、CIDR設計の最適化、Transit Gateway連携による効率的なネットワーク管理を実践問題で理解します。

この記事のポイント

  • 1
    ルート集約の基本概念と大規模ネットワークでの効果を理解する
  • 2
    BGP設定によるルート制御とTransit Gateway連携を習得する

目次

ルート集約

ルート集約は、複数の具体的なネットワークルートを、より大きなアドレス範囲を含む単一のルートに統合する技術です。大規模なハイブリッドネットワーク環境において、ルーティングテーブルサイズの最小化管理効率の向上を実現します。

AWS環境では、Transit GatewayとBGPを組み合わせることで、オンプレミスネットワークとの効率的な接続と、スケーラブルなルート管理を実現できます。

🔍ルートアドバタイズ

ルーターが他のルーターに対して「このネットワークへの経路を知っている」ことを通知する仕組みです。BGPなどの動的ルーティングプロトコルを使用して、ネットワーク経路情報を自動的に共有・更新します。

従来の個別ルート管理の課題

従来の個別ルート管理では、各データセンターやオフィスのネットワークセグメントを個別にBGPでアドバタイズするため、ルーティングテーブルの肥大化管理複雑性の増大が深刻な問題となります。

特に50以上の拠点を持つ企業では、Direct Connect GatewayのBGP制限(100ルート)に抵触するリスクが高まります。

集約前:個別ルート管理による問題

集約前:個別ルート管理による問題

ルーティングテーブル肥大化

6個のデータセンター(10.10.0.0/16~10.15.0.0/16)で6個のルートエントリが必要となり、拠点数に比例して増加します。

BGPコンバージェンス遅延

障害発生時のルート再計算に時間がかかり、ネットワーク復旧が遅延する可能性があります。

管理オーバーヘッド増大

新拠点追加時に複数箇所での設定変更が必要となり、設定ミスのリスクが高まります。

Direct Connect制限

BGPセッション経由で100を超えるルートをアドバタイズするとセッションがDOWN状態になる制限があります。

ルート集約による効果的な解決

ルート集約により、6個の個別ルート(10.10.0.0/16~10.15.0.0/16)を1つの集約ルート(10.10.0.0/13)に統合できます。これにより、ルートエントリ数を大幅に削減し、管理効率を大幅に向上させます。

集約後:効率化されたルート管理

集約後:効率化されたルート管理

ルート集約の実装により、ルーティングテーブルサイズの大幅な削減とBGPコンバージェンス時間の短縮を実現できます。また、新拠点追加時の設定変更が最小限に抑えられ、運用効率が向上します。

主要な適用場面

ルート集約が最も効果を発揮するのは、多数の拠点を持つ企業ネットワークやマルチクラウド環境です。

大規模ハイブリッドネットワーク環境

50以上のVPC複数のリージョンを持つ企業では、個別ルート管理が運用負荷の大きな要因となります。ルート集約により、管理エントリ数を劇的に削減できます。

ルーティングテーブル最適化

数百のルートエントリを数十に削減し、ルーター処理性能を向上させます。

BGPコンバージェンス高速化

ルート数削減により、障害発生時のBGPコンバージェンス時間を短縮できます。

管理オーバーヘッド削減

新拠点追加時の設定変更を最小限に抑え、運用効率を向上させます。

メモリ使用量最適化

ルーター機器のメモリ消費量を削減し、ハードウェアリソースを効率化します。

判断基準

動的 vs 静的ルーティング: 大規模環境では動的BGPルーティングの利点(自動フェイルオーバー、負荷分散)を活用しながら、集約により管理複雑性を削減するアプローチが最適です。

BGPルーティング制限対策

AWS Direct ConnectやVPNでは、BGPセッション経由で100ルートを超える場合、制限に抵触してセッションが不安定になることがあります。

ベストプラクティス

BGP制限の影響: Direct Connect GatewayはBGPセッション経由で各IPv4/IPv6に対して100を超えるルートをアドバタイズすると、セッションがアイドル状態になってDOWN状態になることがあります。

実践問題で確認

ここまで学んだルート集約の概念と実装方法を、実践的な問題で確認しましょう。各問題は実際の企業環境で発生するネットワーク課題に基づいており、適切な最適化戦略の選択能力を養います。

AWS認定高度なネットワーキング - 専門知識

練習問題

ある大規模金融機関がAWS クラウドへの移行を進めており、複雑なハイブリッドネットワークを設計しています。この組織は世界中に複数のデータセンターを持ち、以下のネットワーク構成を計画しています: - 複数のAWSリージョンにわたって50以上のVPCをデプロイ予定 - 各リージョンのVPCはAWS Transit Gatewayを介して接続 - 全リージョンのTransit Gatewayは相互接続されている - 主要な地域データセンターはAWS Direct Connectを介してAWSに接続 - 支店オフィスはAWS Site-to-Site VPNを介してAWSに接続 - 地域データセンターと支店オフィス間の既存のWAN接続は維持 現在のIPアドレス計画は以下の通りです: - 本社データセンター: 10.0.0.0/16 - 北米データセンター: 10.1.0.0/16 - 欧州データセンター: 10.2.0.0/16 - アジア太平洋データセンター: 10.3.0.0/16 - 開発VPCグループ: 172.16.0.0/16 ~ 172.31.0.0/16 - テストVPCグループ: 192.168.0.0/16 ~ 192.168.255.0/24 - 本番VPCグループ: 10.4.0.0/16 ~ 10.100.0.0/16 ネットワークアーキテクトは、このハイブリッドネットワーク環境全体でのルーティングを最適化するために、最も効率的なルーティング戦略を決定する必要があります。 この環境において、ルーティングテーブルのサイズを最小限に抑え、ネットワークの俊敏性を維持し、将来の拡張に備えるために最も効果的なルーティング最適化戦略はどれですか?

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練習問題

ある製薬会社は、研究開発部門と製造部門のそれぞれに独自のデータセンターを持っています。各データセンターには企業管理のルーターがあり、両方のデータセンターはDirect Connect Gatewayを介してAWSへの接続を確立しています。BGPを使用してルートをアドバタイズしており、研究開発部門のルーターは110のルートをDirect Connect Gatewayにアドバタイズし、製造部門のルーターは60のルートをアドバタイズしています。 Direct Connect GatewayはVirtual Private Gateway(VGW)を介して会社のVPCに接続されています。しかし、VPC内のリソースには各データセンター内の一部のロケーションからアクセスできない問題が発生しています。ネットワークエンジニアがVPCのルートテーブルを確認したところ、研究開発部門のデータセンターからのルートがルートテーブルに反映されていないことが分かりました。 ネットワークエンジニアはこの問題を最も運用効率の良い方法で解決する必要があります。どのような対応を取るべきですか?

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練習問題

ある企業が、AWS環境と複数のオンプレミスデータセンター間のハイブリッドネットワークを運用しています。オンプレミス環境からは、以下のCIDRブロックがAWSに広告されています: - 10.10.0.0/16(データセンターA) - 10.11.0.0/16(データセンターB) - 10.12.0.0/16(データセンターC) - 10.13.0.0/16(データセンターD) AWS環境では、AWS Transit Gatewayが複数のVPCを相互接続し、AWS Direct Connectを通じてオンプレミスネットワークとも接続しています。Transit Gatewayのルートテーブルには、各VPCからのルートと、上記のオンプレミスCIDRブロックが個別に登録されています。 企業はさらに2つの新しいデータセンター(EとF)を追加し、それぞれ10.14.0.0/16と10.15.0.0/16のCIDRブロックを使用する予定です。また、将来的には、リージョン内では10.10.0.0/13の範囲内でIPアドレスが割り当てられる予定です。 ネットワークエンジニアは、ルートテーブルの管理を簡素化し、スケーラビリティを向上させるために、ルーティングの最適化に取り組んでいます。 ネットワークエンジニアはどのようなアプローチを取るべきですか?

まとめ

ルート集約は大規模ハイブリッドネットワークにおいて、管理効率の向上スケーラビリティの確保BGP制限対策を同時に実現する重要な技術です。適切なCIDR設計とBGP設定により、将来の拡張に対応できる柔軟なネットワークアーキテクチャを構築できます。

連続するIPアドレス範囲効率的に統合することで、ルーティングテーブルエントリ数を劇的に削減。10.10.0.0/16~10.15.0.0/16を10.10.0.0/13集約することで、6つの個別ルートを1つに統合し、管理効率を大幅に向上させます。

Direct Connect BGPセッション100ルート制限を超過した場合のセッションダウン問題を、ルート集約により予防。既存インフラ構成を維持しながら、最も運用効率の良い解決策を提供し、継続的な接続性を保証します。

これらの最適化戦略により、大規模環境での運用負荷を削減し、ネットワークの俊敏性運用効率を両立できます。技術的制約運用効率のバランスを考慮した適切な実装が成功の鍵となります。

理解度チェック

ルート集約がもたらす具体的な効果(テーブルサイズ削減、管理効率化)を説明できるか?

BGPセッションの100ルート制限とその対策方法を理解しているか?

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