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AWSベストプラクティス
約21分
上級+
8/10
2025年7月8日

AWS SCS-C02 対策 職務分掌を実現するアーキテクチャ設計

職務分掌(SoD)を実現するAWSアーキテクチャの設計パターンを解説。マルチアカウント戦略、IAMロールベース制御、CI/CDパイプライン統合の3つの核心パターンを実践問題で理解し、内部不正防止とコンプライアンス要件を満たすセキュリティ統制を習得します。

この記事のポイント

  • 1
    職務分掌の基本原則とAWS実装における要点を理解する
  • 2
    マルチアカウント戦略による環境分離と権限統制の設計を習得する
  • 3
    IAMロールベース制御とアクセス権限分離の実装方法を理解する
  • 4
    CI/CDパイプラインによる承認ワークフローと監査証跡の実現を確認する

目次

職務分掌とは

職務分掌(Segregation of Duties, SoD)は、一人の人物が完全なプロセスを単独でコントロールできないよう権限を分散するセキュリティ統制です。内部不正の防止と事故の予防を目的とし、SOX法、HIPAA、PCI-DSSなどの規制要件でも必須とされています。

AWSでは、物理的分離(アカウント分離)、論理的分離(IAMロール)、プロセス分離(承認ワークフロー)の3つのアプローチで実現します。

資格試験での重要パターン

職務分掌の実装において、以下の3つのパターンが重要です。

マルチアカウント戦略による環境分離

開発・テスト・本番環境を物理的に分離し、AWS Organizationsで一元管理する最も確実な職務分掌実装パターンです。

マルチアカウント戦略による職務分掌の実現

マルチアカウント戦略による職務分掌の実現

図の上部でAWS Organizationsが複数アカウントを一元管理し、SCP(Service Control Policies)で組織全体のガードレールを設定します。各環境は完全に分離されたAWSアカウントで運用され、物理的な境界により権限の混在を防ぎます。

左側の開発・運用チームでは、開発者が開発アカウントで自由にリソースを操作できますが、本番アカウントへの直接アクセスは制限されます。運用者は承認プロセス経由でクロスアカウントロールを使用し、承認されたプロセスを通じてのみ本番環境にアクセス可能にし、責任の所在を明確化します。

右側の監査・ガバナンスでは、CloudTrailがマルチアカウント全体のAPI活動を記録し、AWS Configで設定変更を追跡します。SCPによる予防的統制と、継続的な監視により、職務分掌違反を防止・検出します。

IAMロールベース権限統制

最小権限の原則に基づき、タスク別・環境別にIAMロールを分離し、アクセス権限を厳密に統制するパターンです。

IAMロールベース権限統制による職務分掌

IAMロールベース権限統制による職務分掌

図の上部でIAM Access Analyzerが実際のAPI使用パターンを分析し、最小権限ポリシーを生成します。これによりワイルドカード権限(*)を避け、真に必要な権限のみを付与する最小権限の原則を実現します。

左側のロール分離では、開発者ロール、CloudFormationロール、運用ロールがそれぞれ異なる権限セットを持ちます。開発者はiam:PassRole権限でCloudFormationロールを渡すことはできますが、直接的なインフラ操作権限は持ちません。CloudFormationロールがインフラデプロイを実行し、下部のAWSリソース(EC2、RDS)を作成・更新します。

右側の統制メカニズムでは、IAM条件でタグベースアクセス制御を実装し、特定環境のリソースにのみアクセスを許可します。外部監査人用の一時認証情報発行や、定期的な権限レビューにより、継続的な統制を維持します。

CI/CDパイプライン統合承認ワークフロー

インフラストラクチャの変更を自動化されたパイプラインで管理し、コードレビューと承認プロセスを強制するパターンです。

CI/CDパイプライン統合による承認ワークフローの実現

CI/CDパイプライン統合による承認ワークフローの実現

図の左側でGitHubリポジトリがプルリクエストベースのコードレビューを強制し、承認なしでの変更を防止します。CodePipelineがソースコード変更を検出し、自動的にパイプラインを開始します。

中央のビルド・テストフェーズでは、CodeBuildでCloudFormationテンプレートの構文チェックと単体テストを実行し、品質を保証します。手動承認アクションにより、本番デプロイ前に最終確認を実施します。

右側のデプロイ・監査では、CloudFormationがインフラを自動デプロイし、AWS Configが手動作成されたリソースを検出します。すべての操作はCloudTrailで記録され、完全な監査証跡を提供し、誰がいつ何を変更したかを追跡可能にします。

実践問題で確認

ここまで学んだ3つのパターンを、実践的な問題で確認しましょう。各問題は企業の実際のシナリオに基づいており、職務分掌の適用能力を評価します。

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

ある企業のセキュリティチームは、AWS環境における職務分掌を適切に実施するために、IAMロールとポリシーの設計を見直しています。この企業では、開発者がAmazon EC2インスタンスを起動し、開発環境のAmazon RDSデータベースにアクセスする必要がありますが、本番環境のデータベースへのアクセスは制限されるべきです。さらに、本番環境のインフラストラクチャの変更は、コードレビューと承認プロセスを経た後にのみ許可されるべきです。 セキュリティのベストプラクティスに従って職務分掌を実施する最も効果的な方法はどれですか?

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

セキュリティエンジニアは、製造業向けのサプライチェーン管理システムをデプロイするためのAWS CloudFormationスクリプトを実行する必要があります。このCloudFormationスクリプトは、Webサーバー、キューイングシステム、およびデータレイクを含むインフラストラクチャをビルドします。このスタックは、開発環境とテスト環境で正常にデプロイされ、本番環境への展開準備が整っています。 本番環境のスクリプトは最小権限の原則に準拠する必要があります。さらに、セキュリティエンジニアのIAMアカウントとCloudFormationの間で職務分掌を確立する必要があります。 これらの要件を満たすソリューションはどれですか?

AWS認定セキュリティ - 専門知識

練習問題

ある企業では、新しいウェブアプリケーションのためのAWSインフラストラクチャをデプロイしています。このアプリケーションは、プライベートサブネット内のAmazon EC2インスタンス上で実行され、Amazon RDSデータベース、Amazon ElastiCacheクラスター、Amazon S3バケットを使用します。セキュリティチームは以下の要件を設定しました: - アプリケーションとデータベースの認証情報は安全に管理され、テンプレートやソースコードには含まれない - インフラストラクチャの変更は監査可能であり、回避不可能な一貫したプロセスを通じて行われる - コードレビューと承認のプロセスを経ることなく本番環境に変更を加えることはできない 開発チームは既にAWS CloudFormationを使用してインフラストラクチャをコード化していますが、セキュリティ要件を満たすために追加の措置が必要です。 これらの要件を満たすために、セキュリティエンジニアはどのような組み合わせの対策を実装すべきですか?(3つ選択してください)

まとめ

職務分掌の実現には、物理的分離論理的分離プロセス分離の3つのアプローチを組み合わせることが重要です。3つの核心パターンを理解することで、様々なコンプライアンス要件に対応できます。

開発・テスト・本番環境をAWSアカウントで物理分離し、AWS OrganizationsとSCPで一元管理。クロスアカウントロールによる承認ベースアクセスで責任の所在を明確化。

IAM Access Analyzerで最小権限ポリシーを生成し、タスク別・環境別にロール分離。iam:PassRole権限による間接実行で職務分掌と最小権限の原則を両立。

GitHubプルリクエスト、CodePipeline承認アクション、Config Rules監視により、コードレビューと承認を強制。CloudTrailによる完全な監査証跡で説明責任を確保。

これらのパターンを組み合わせることで、SOX法、HIPAA、PCI-DSSなどの規制要件を満たす包括的な職務分掌システムを構築できます。

理解度チェック

マルチアカウント戦略(Organizations + SCP + クロスアカウントロール)による環境分離と物理的権限統制の仕組みを説明できるか?

IAM Access Analyzer最小権限生成、ロール分離設計、iam:PassRole権限による間接実行の職務分掌実装を説明できるか?

GitHubプルリクエスト → CodePipeline承認 → CloudFormation実行 → Config Rules監視による承認ワークフロー強制を説明できるか?

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