AWS実践2025/8/22
約12分
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AWS SCS-C02 対策 クロスリージョンレプリケーション

AWSにおけるクロスリージョンレプリケーションの実装方法を解説。S3、RDS、災害対策におけるマルチリージョン構成の設計原則、KMS暗号化データのレプリケーション、コンプライアンス要件への対応を実践的な問題を通じて理解します。

この記事のポイント

  • 1
    クロスリージョンレプリケーションの設計原則と実装パターンを理解する
  • 2
    KMS暗号化データのレプリケーションにおける権限管理を習得する

目次

クロスリージョンレプリケーションとは

クロスリージョンレプリケーションは、異なるAWSリージョン間でデータを自動的に複製する仕組みです。これにより、地理的な冗長性を確保し、災害対策とコンプライアンス要件を満たすことができます。

主な実装パターンには、S3のクロスリージョンレプリケーション(CRR)RDSのマルチリージョンリードレプリカ、AWS Elastic Disaster Recoveryなどがあります。

資格取得で重要なトピック

クロスリージョンレプリケーションの実装では、以下の3つのトピックが特に重要です。

S3クロスリージョンレプリケーションの実装

S3のクロスリージョンレプリケーション(CRR)は、オブジェクトの自動複製を実現する基本的な機能です。特にコンプライアンス要件を満たす場合の実装パターンを理解することが重要です。

S3クロスリージョンレプリケーションアーキテクチャ

S3クロスリージョンレプリケーションアーキテクチャ

図の上部にあるプライマリリージョン(us-east-1)では、ソースバケットにバージョニングS3 Object Lock(コンプライアンスモード)有効化されており、これらはCRRの必須要件です。KMSによる暗号化も適用されています。

中央のIAMレプリケーションロールは、ソースバケットからの読み取りとデスティネーションバケットへの書き込み権限を持ちます。このロールには、s3:GetReplicationConfigurations3:ListBuckets3:GetObjectVersionForReplications3:ReplicateObjectなどの権限が必要です。

下部のセカンダリリージョン(eu-west-1)では、レプリケートされたオブジェクトがデスティネーションバケットに保存されます。こちらにもバージョニングS3 Object Lock(コンプライアンスモード)適用され、同様の厳格な保護が実現されています。

重要な設計ポイント:医療データなどの規制対象データでは、両リージョンともコンプライアンスモード適用することで、管理者でも保持期間中の削除を防止し、最高レベルのデータ保護を実現できます。

KMS暗号化データのレプリケーション

KMSで暗号化されたデータのクロスリージョンレプリケーションでは、各リージョンのKMSキーに対する適切な権限管理が成功の鍵となります。

KMS暗号化データのレプリケーションフロー

KMS暗号化データのレプリケーションフロー

図の左側で、ソースリージョンのKMSキーにより暗号化されたオブジェクトは、レプリケーションプロセスで一度復号化される必要があります。このため、レプリケーションロールにはkms:Decrypt権限が必要です。

中央のレプリケーションプロセスでは、暗号化されたオブジェクトを復号化し、デスティネーションリージョンの新しいKMSキーで再暗号化します。このプロセスは透過的に実行されますが、適切な権限がないと失敗します。

右側のデスティネーションリージョンのKMSキーでオブジェクトを暗号化するには、レプリケーションロールにkms:Encrypt権限が必要です。KMSキーはリージョン固有であるため、各リージョンで個別のキーを使用する必要があります。

トラブルシューティング:暗号化されていないオブジェクトはレプリケートされるが、暗号化されたオブジェクトがレプリケートされない場合、KMS権限の不足が原因です。

判断ポイント:クロスリージョンレプリケーションでは、ソースのkms:Decryptデスティネーションのkms:Encrypt両方の権限が必要です。

実践問題で確認

ここまで学んだクロスリージョンレプリケーションの実装パターンを、実践的な問題で確認しましょう。各問題は実際のビジネスシナリオに基づいており、適切な判断力を養います。

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練習問題

ある医療機関は、患者の医療記録を含む重要なデータを保護するための戦略を改善する必要があります。このデータはAmazon S3バケットに保存されており、規制要件により5年間の保持期間が義務付けられています。 最近、人間のミスにより重要なデータが誤って削除される事故が発生しました。また、セキュリティ評価により、特権を持つ管理者アカウントが侵害された場合にデータが永続的に削除されるリスクが特定されました。 この医療機関は、次の要件を満たすソリューションを実装する必要があります: - プライマリリージョンからセカンダリリージョンへのデータレプリケーション - 管理者権限を持つユーザーでも、規制で定められた保持期間中はデータを永続的に削除できないようにする - セカンダリリージョンでのデータ保護により、プライマリリージョンでの障害やセキュリティインシデントからの復旧を可能にする これらの要件を満たすソリューションはどれですか?

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練習問題

ある企業のセキュリティチームは、コンプライアンス要件を満たすためにus-east-1リージョンのAmazon S3バケットからeu-west-1リージョンの別のS3バケットへのクロスリージョンレプリケーション(CRR)を設定しました。ソースバケットには、AWS KMSカスタマーマネージドキー(CMK)で暗号化されたオブジェクトと暗号化されていないオブジェクトの両方が含まれています。レプリケーション設定では、デスティネーションバケットでオブジェクトを暗号化するためにeu-west-1リージョンの別のカスタマーマネージドキーを使用するよう指定されています。 設定から24時間後、セキュリティチームは暗号化されていないオブジェクトはレプリケーションされているが、暗号化されたオブジェクトはレプリケーションされていないことに気づきました。レプリケーションに使用されるIAMロールには、ソースバケットとデスティネーションバケットへの適切なS3アクセス許可が付与されています。 この問題を解決するために、セキュリティチームが取るべき最も効果的な対策はどれですか?

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練習問題

ある組織はマルチアカウント環境でAWSインフラストラクチャを運用しています。最近、あるAWSアカウントでセキュリティインシデントが発生し、複数のEC2インスタンスが侵害された可能性があることが判明しました。セキュリティチームはインシデント調査を完了し、フォレンジックエビデンスを含むEBSスナップショットを作成しました。 組織のセキュリティポリシーでは、以下の要件が定められています: - すべてのフォレンジックエビデンスは少なくとも1年間保持する必要がある - フォレンジックデータは偶発的または悪意のある削除から保護する必要がある - インシデント対応プロセス後も、フォレンジックデータの完全性が確保されていることを証明できる必要がある - 複数のリージョンにわたる災害からデータを保護する必要がある セキュリティエンジニアは、これらの要件を満たす最適なソリューションを特定する必要があります。 どのソリューションが要件を最もよく満たしますか?

まとめ

クロスリージョンレプリケーションの実装では、ビジネス要件に基づく適切なアーキテクチャ選択最重要です。

医療や金融などの規制業界では、S3 Object Lockのコンプライアンスモード重要な役割を果たします。このモードでは、ルートユーザーを含むすべてのユーザーが保持期間中のオブジェクトを削除できません。S3クロスリージョンレプリケーションと組み合わせることで、地理的な冗長性と規制準拠を同時に達成できます。

クロスリージョンレプリケーションでKMS暗号化オブジェクトが複製されない場合、権限不足が原因です。レプリケーションロールには、ソースリージョンのKMSキーに対するkms:Decrypt権限と、デスティネーションリージョンのKMSキーに対するkms:Encrypt権限の両方が必要です。KMSキーはリージョン固有であることを理解することが重要です。

これらの実装パターンを理解し、要件に応じた最適な構成を選択する能力が、堅牢なクロスリージョンアーキテクチャの構築につながります。

理解度チェック

S3 Object Lockのコンプライアンスモードの特徴を説明できるか?

KMS暗号化データのレプリケーションに必要な権限を理解しているか?

クロスリージョンレプリケーションが失敗する原因を特定できるか?

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